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Drifting Antigone Frontline

今夜、世界をあとにして

2003/02/20 05:49 JST

 椎名林檎のことしか考えられない。むねが不安にかきむしられて空洞になる。へんな間の悪さが大挙して襲ってきてくわたしをとりひしぐ。あやまっても許してはくれない。誠実で内面を一切欠くかれらには運命にも空隙はないのだ。ある朝そらからからすがたくさんふってきたら、あなたはかれらのために泣いてあげるだろうか。

 椎名林檎のことしか考えられない(という嘘であるけれども)、それを聞いたらきっと、不機嫌そうに彼女はあんなおばさん、悪趣味なだけじゃんというのだろう。そういうことを考えると世の中はすこしはいいところもある。

 くじらがにんげんたちにひいきにされているからとうみのかみがみにあやうくりくのうえについほうされそうになって、なくなくたすけてくれるようににんげんのかみさまのところにいくが、にんげんのかみさまはりくのうえはよいところだといってとりあってくれない。それでさんにんのくじらのかみのうちのひとりがはだがかわいてしまってみちみちしんだ。つぎにのこったふたりのくじらのきょうだいはこんどはかわのかみのところにいってたすけてくださいといったが、きぐらいのたかいうつくしいかわのかみさまはしおのにおいのあらあらしいふたりのおおきなからだのきょうだいをみて、おおにくらしい、なんていやらしいくさいれんちゅうね、あなたがたはもともとやまのいきものではないの、うみにすんでいたのがまちがいだったのよととりあってくれません、それでなくなくあるくうちにおとうとのくじらのかみはとうとうからだのおもみにたえられなくなってじゅうりょくにとりころされてしまいました。

それでまたのこされたくじらのかみはいったいどこにたすけをもとめたらいいかわからなくて、それはかなしくてかなしくて、おもわずおおきななみだをこぼしました。そうするとそのおおきなとうといなみだはあれくるうずしおをなかにひそませていましたのでみるみるさとへとながれだして、たくさんのひとがまきこまれてあかんぼうやとしよりやわかいひとらがしにました。そのときりょうにでていてしらなかったむらのおとこたちはそれでかなしくてかなしくておしだまってしにかけているくじらのかみをしばりあげはしましたものの、どうすることもできません。そしてなのかとななばんたがいにたがいをほろぼしそうになったふたつのうからは、そのままなにもかたらずにわかれたのでありましたが、それからはにんげんはくじらのかみがみとみるとおおきななのりをあげてたたかうようになりひとびとはまえよりもしぬひとがふえたくらいなのでしたが、よわいものたちがどうすることもできずかなしむようなことだけはすまいというおきてはどちらのむねからもきえませんでした。

 争いを否定することができないというのはほんとうにほんとうのところどこまでいえることなのだろう。