ゲノムの囲い込み
#この記事、追記があります。
ゲノム計画の進展にともなって、アメリカの多くの私企業が、遺伝情報を特許化しました。おもに薬の分野で、たしかにあたらしい品種といったもののビジネスのうえでの有効性は疑えません。ですから、純粋に商行為としてだけしかみなければ、とくに問題があるようには見えないかもしれません。
しかし、たとえばある例を考えましょう。先住民のあるグループが長年にわたって、ある品種の草を現代医学では不治となっている病にもちいてきていて、それは実際治癒力があったとします。それをある企業が発見し、遺伝子解析し、特許申請します。何が起こるでしょうか。かれら先住民が伝統医学でその植物を使用することは違法行為になります。そのことで、どれだけの文化的な、そして実生活上の破壊が生じるかは、予測不可能です。
だいたいアメリカは特許が出願主義だというのが大いにだれが見たって問題なのですが。
同様なことはやはり大規模に、そして死活問題として、農業分野でおきています。ある品種の稲なり、なんなりの主たる生業になっているような植物が遺伝子解析され特許化されてしまったらどうなるでしょうか。
知的所有権は、このような共同的、伝統的、あるいは社会的所有がのぞましいものに対する配慮を一切欠いていて、非常に多くの問題を引き起こしています。とくに、はたしてそれが発見に類するものか発明に類するものかという区別もあいまいなままに、インフラであるべきものがつぎつぎとそれぞれの企業に分割され、誰の所有でもないものがなくなった世界など、とうてい生存可能とは思えません。
広範な、あるいは共同体的、社会的影響力と、伝統的な価値をもつものを、とくに遺伝子や基礎的技術インフラについて、それが発明者、あるいははなはだしいときはただのめはしのきく出願者に、個人的欲望に従ってコントロールする権利を与えるなどということがどれほど危険なことか、ということは大いに理解されるべきことだと思います。
三月一日追記。http://www.aa.alles.or.jp/~nishiyama/patent.html
うーむ、かなりはずかしいミスをしてしまった。先出願主義は日本でアメリカは発明主義でしたね。
ただ、権利の後出しで混乱することがある、というのがgif騒動なんかであらわになったので、その点の論旨はかわらないと思っています。が、練り直しが必要。