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Drifting Antigone Frontline

2003/04/18 00:00 JST

落ちてくる空

 月が今夜半過ぎに粉々に砕けて降ってくるのだ、と電話で海の向こう側に住んでいる妻が知らせてきた。海には太古の戦争の遺物が無数に浮かんでいて、錆びて朽ち果てた戦艦はもはや岩棚と見分けがつかず、波に洗われて漂流する廃墟は独特の美しさを獲得していた。

 妻が海の向こうに住んで十四年になろうとしていた。テラスから見上げると、紺色から闇へと推移していく空には卵のような巨大な月が。

 降るきんいろの砂を予期して、わたしは夜半までの暇をつぶすために部屋へと入り書物のページを開いた。


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