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Drifting Antigone Frontline

2003/05/26 00:00 JST

01:18

 処世術について書こうとしたのだが、意に添わない言葉しか出てこない。

 ともかく、ぼくは処世術は本当の解決の回避であるから、痛みと恥を伴って、しかも私的に当事者がやむを得ず選択するもので、本性上他者に推奨すべきものではないと考えている。だから、ぼくが処世術や、ひろい意味での政治や政策の論理を語ったわけではないことだけは書いておきたい。政治的に有効な方策と倫理的に是認される行為は多くの場合別だろう。わたしは政治的に有効な方策を選ぶことを否定する気は毛頭ない。ただひとつ、その選択が政治的に有効である故をもって、それが倫理的に是認すべきものになるわけではない、ということを確認したいだけだ。それでもときには場合によってひとは政治的に有効な、そして倫理的にあってはならないことを選択すべきなのだが、その場合、それを倫理的にその故をもって是認してはならない。悪と知りつつ行え。そして悪しか方途がなかったことで自分を決して許してはいけない。

 あることが現実性がないときに、それでもそれが本当はベストなのだと確認することは、現実性のある次善の策を主張することよりも意味がないわけではない。ベターしか行えない場合でも、ひとはもしチャンスがあればベストになるようにつとめるつもりがあるべきだからだ。現実性がないからといって、なにがベストかを探求することを忘れてしまえば、あるいは、現実性や蓋然性や有効性を基準にしてしまえば、それだけ、現実に不当な譲歩をしたことになる。或る事があってはならないことなら、寧ろひとは愚かにもそれに回避せず激突し害を蒙るべきでさえある。うまく立ち回ってそれを避けることは、問題を隠すからだ。或る事があってはならないことなら、そのことを避けるために余分の努力をすることを強いられることもまた、あってはならないことなのだ。そのことを曖昧にしてはいけない。そう思う。

 別に倫理的なリゴリズムがいいとはぜんぜん思ってないんだけどね。なんかさ。


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