■ 引用
一篇の詩が生れるためには
われわれは殺さなければならない
多くのものを殺さなければならない
多くの愛するものを射殺し、暗殺し、毒殺するのだ
見よ、
四千の日と夜の空から
一羽の小鳥のふるえる舌がほしいばかりに、
四千の夜の沈黙と四千の日の逆光線を
われわれは射殺した
聴け、
雨のふるあらゆる都市、溶鉱炉、
真夏の波止場と炭坑から
たったひとりの飢えた子供の涙がいるばかりに、
四千の日の愛と四千の夜の憐れみを
われわれは暗殺した
記憶せよ、
われわれの眼に見えざるものを見、
われわれの耳に聴えざるものを聴く
一匹の野良犬の恐怖がほしいばかりに、
四千の夜の想像力と四千の日のつめたい記憶を
われわれは毒殺した
一遍の詩を生むためには、
われわれはいとしいものを殺さなくてはならない
これは死者を甦らせるただひとつの道であり
われわれはその道を行かなければならない
■ ソウダイセイボウコウジケン
ぼくは「ゴウカン」という文字を書くことさえ耐えられないようなところがあるので、このようなことには本気でかっとします。論じることなどできません。
まこと騎士道地に落ちたり。
■ 「世界中がアイ・ラブ・ユー」
ウッディ・アレンは食わず嫌いしていたので、見てよかった。
ゴールディ・ホーンが好き。ドリュー・バリモアはあいかわらず、なんかほつれたような風情。コメディエンヌがすきというのはぼくの確固たる傾向のようだ。ただし面食い。
ゴールディ・ホーンといえば「潮風のいたずら」たのしい映画です。
ジュリア・ロバーツはほんとうに普通の意味で美人だなあ。
別嬪さん、という言い方がぴったりくる感じ。
■ しかし
チキチキバンバンはばかばかしくなって見るのをやめたのだった。違いは何だったのだろう。
■ 「ティファニーで朝食を」
とりあえず、猫の映画。この猫、とてもかわいい。ひたすらかわいい。
あと、アメリカ映画では南米は「異界」の象徴なのだなあと思った。
映画だけじゃないか。「路上」でもそうだったし。
■ 石川淳「普賢」「紫苑物語」「喜寿童女」「鷹」「虹」「西游日録」ほか
夷斎先生はやっぱり読ませる。最近、小説以外ばかり読んでいたのだけれど、(プリデイン物語は読んでた)ちゃんとおもしろい小説が読めてよかった。しかし戦後のこの時期は口調が観念的だなあ。地の文ではなくて会話がね。「鷹」の革命幻想はなんか妙に泣かせる。ぼくだけだろうか。「紫苑物語」はどうしても安吾の「夜長姫と耳男」がちらつく。これにかぎらず淳さんの小説には安吾の作品との「対応」を感じる。「おとしばなし李白」(タイトル不確か)とか。
石川淳をまだ読んでない人はぜひ読んでください。
■ イタロ・カルヴィーノ「マルコ・ポーロの見えない都市」「宿命の交わる城」
カルヴィーノはうまい。読みましょう。宿命の交わる城は、タロットをつかって語る、という体裁で語られる物語。
あと、やっぱり小説にとってリアリズムなんて言い出すのはうるさいよな、というのを改めて思う。石川淳はリアリズムは作者の気合のことなんじゃないかと片付けていたけれど、まったくそのとおりで、小説の本質は奇想だと勝手に断定。
■ 小説読本
http://d.hatena.ne.jp/koseki/20030620#1056133254
おーつかえーじは読んだことないのでいーかどうかわからないですが、
ぼくのすきな小説の本。順不同。
バルガス・リョサ「若い小説家に宛てた手紙」
シクロフスキー「散文の理論」
カルヴィーノ「次の千年紀のための七つのメモ」
ナボコフ「ヨーロッパ文学講義」「ロシア文学講義」
バフチン「ドストエフスキーの詩学」
フォースター「小説の理論」
クンデラ「小説の精神」
クンデラはなんか小説の書き方的に参考になる。あくまで気分だけど。
プルースト「失われた時を求めて」
「見出された時」の部分ってあからさまに小説論ですよ、あなた。
安吾「Farceに就て」「文学のふるさと」
石川淳「文学大概」
ちなみに実践的にうまいなーと思うのはフローベールとディケンズ。
ほかいろいろ。とりあえずここまで。
■ ヴィトルド・ゴンブロヴィッチ
ところでなぜゴンブロヴィッチはもっと読まれないのだ。
おかしいじゃないか。
あんなに面白いのに。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4770402147/qid%3D1056135483/250-4468898-5493069
「フェルディドゥルケ」「コスモス」あたり。
もっと読みたいのに……
http://www.asahi-net.or.jp/~tt2w-aktk/kundera/nouvelles.html
■ そういえば
ブルガーコフも面白いのです。これからはスラブですよ。
「巨匠とマルガリータ」
Comments(in hatena)
koseki『なんどか書き直しているうちに最初書いたのとニュアンスが変わってしまいました。。文系の言葉がネットに増えていくのを見ていて、自分ももう少しちゃんと本を読もうと思うようになりました。』
essa『すごい詩ですね 誰の作品ですか? > 一篇の詩が・・・』
jouno『田村隆一さんです。戦後詩の世界の中心人物の一人。』
kouda_dc『はずかしながら『高校生のための文章読本』で初めて読んだ次第です・・・。あれにはいろいろおもいでが・・・』