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Drifting Antigone Frontline

にっき

2004/01/09 19:59 JST

 今日はスパラジBSQR/BBQRでの生放送。ゲストは桃井はるこ。

 「バフチンと全体主義」読了。ロシアでの二度の地名改名ブームに関する論考が面白かった。ロシアでは、改革改良は終末論的パトスを伴うことが多く、前代の観念的で劇的な否定をともない、「あたらしくはじめる」という調子が強い、というようなところ。そしてソ連崩壊後の改名ブームでもそれは同様らしい。このへんは日本も似た傾向を感じる。ふるい価値観を並列して認めていれば、やがてそこがつぎのあたらしい価値観をはぐくむ温床になりうるのだが、そういう部分はいかにも少ない気がする。透谷が「反動から反動へと走る」文壇の傾向を嘆いたのは明治二十年代のことだった。また、別の論考とのからみで、グロイスなんかの、バフチンやロシア・アバンギャルドをスターリニズムと通じるものとして批判する議論にも、近代主義、個人主義、市民主義的な方向への行き過ぎを感じる。スターリニズムもアバンギャルドもたしかに、近代的な個人主義的芸術観、政治観を克服することを夢見ていたけれど、その方向性はまったく逆のものだったはずで、芸術の十月と十月の芸術との齟齬は、やはり見過ごすことはできない。バフチンのモノローグ的な個の批判を全体の称揚と解釈するのも曲解だろう。大衆としての孤立した個こそが、全体主義的な政治の基盤だったのであり、全体主義は、そのような孤立した個を克服したことはなく、むしろ、そのような個の孤立をこそ存立基盤にしていたのではないだろうか。

「グリーン・デスティニー」を見た。結末の大陸浪漫というか中国文芸的なごまかし方には不満だけど、よくできていた。ヒロインの乱暴さはすばらしい。でも長さの割に消化不良かもしれない。