2000/07/10 彼女のブルー、ぼくのデプレッション

 いかにぼくがデザインも含めておしゃれじゃないか、身売りしてるものがすくないか、ぼくは知ってるつもりだし、だいたいいいわけがましくて、単調なのだ、ちぇっ。とはいえ、だ、

 彼女のブルーがどうしようもない。

 いま、電話したら彼女は投げやりで穏やかで、ああ、もう、なんというか、静かにおちついてcoccoなんかきいてるし、ひとごとみたいに、なんだかなあ、という感じの口調だし、ぼくはいろいろ思わず励ます自分を完全な馬鹿者として知覚し、しかしかといってそのほかの行動の仕方を思いつかず、なんでそんなに不思議そうに大丈夫ですよなんて、いやたしかにそういう十全な権利があなたにあることぐらいわかるし、ぼくが勝手になんらかの関係をもちたいと思ってるだけだが、そうはいってもぼくの声はたしかに存在しているのじゃないか。

 ひとは彼女のブルーはそしてあのブルーはきっともうそれだけでぼくはTODESTRIEBEの実在をぼくに信じさせる。

 死の衝動? 大げさだな。

 ああ、愚か者、愚か者、わがことオワリヌ、なにいってんだ、たのしそうだな、オレ。

 他者の静寂な決意の確かさこそ、とめがたくこの苦痛に彩られている。ぼくの文章はみなこんなの、紙反故だ、なんだよ。

 ああ、彼女のブルーがいかんともしがたい。

 自己愛神経症は欲動を他者にふりむけないので、関係を形成できず、治療しがたい。声をきいてくれ、というか、ここはどこだろう。

 もちろん、大前提としてぼくは失礼なのであり、そのことについては知ったことか。何一つ記載されないうそはない。

 もちろん、もちろん、あなたは智恵子ではない。あなたはノイローゼですらない。あなたはたんにブルーなだけだ。

 世界は根元的に不正であり、このようなわずかな現実のディティールさえ無根拠に幸福であることを許そうとしない。ただひとつのしずかで眠りによく似たブルーでさえ、抑うつの十分な根拠であり、誠実の壊滅的な反証でありうる。

 こんなものはすべて口実だ。だがぼくが真剣にあなたの憂鬱の妙な穏やかさが一刻も晴れようことを祈っているのは、絶対に現実なのです。ぼくはたまにしか本当のことを言わないのだから、しかし言葉なんて無効の極みだと思える。本当もうそも同じ表現によって言われる。

 身体は無数の部分からなっていて、その部分がいちいちひとつひとつ抑うつのポジションへと編成していく。

 この一瞬もわたしは電話することができるだろう、しかしそれはまったく事態になにも付け加える公算をもたない。この無為と待機は強いられたものと言うより、選び取られたものであるだけに、焦りがどれだけ含まれていることか。

 時間は粒子であり、その流砂のおとがはっきりと聞こえる気がするのはそういうときだ、ひとつひとつ数えたくなる。

 ぼくはあなたに返還すべきものを見いだしたい。あなたが恩寵である度合いだけ、贈与も輝くであろうと人為的にみなしたいのだ。

 どうしてこう、勝手なお世話を。……maybe I love the taste of your blue? so my pain is not true. Yes. 逃げ場がないよな。