他人の女、嘘のそら

 

 

 不実なものばかり手折ってた
 そんなふうにキスをすればいいなんて思いもしなかった
 ばかだなっていってもらおうと姑息な夢をつくった

 だけどときどきは果敢になるのか
 いつもの言葉にしるしをつけた
 儚い引用符たち・・・・・
 きみの署名をしるして、嘘の空にばらまく
 これは我が肉、我が血なり

 空の不確かさを見つめてはいけない
 壊れてしまうのは空だけじゃない
 ガラスばかりが透明なのでもない

 ねえ、マリー、ぼくは
 不実なことばかりするんだ
 一等ふじつなことばかりをするんだ
 みんな騙して心を盗っちゃって
 それから知らないよっていうんだ
 ぼくは毬藻みたいに憂鬱だよ
 
 そしてときどきはまじめになって
 ばかだなって言葉のやさしさの醜さを聞きつける
 きみはやさしい女でもないし僕のことなど知りもしない
 だから

 記憶喪失の人魚姫
 どこがいいのかだれも覚えてない
 魚の鱗をかくしてどこかへ消えた
 もう誰にも捜しようはない

    そらをつかう
    うそのなかで
    おもいをさらす
    もう、なにもない

 落ちていくべき空さえ壊れたときにも
 気が狂いそうなくらい
 たましいが愛をつくる音が聞こえてる
      (不実で見知らぬ他人の女)

 多分そのせいで
 何かが壊れていく音も聞こえているんだ
 
 恋人よ、それなのに、
 なんて、
 静かなんだろうね
 なんて
 なんて
 一色のはるかな
 協和音だろうね
 

 Intolerance