万世一系とY染色体
http://d.hatena.ne.jp/jouno/20051106/1131749409
からの続き
おまけの追記。
そんなこといわなくても皇別諸氏は
養子とかが間に入ってなければすべて神武以来の男系じゃん、といわれて、
そういえばそうなので、皇別諸氏が列挙してあるページへリンク。
第一世代 |
A |
B |
C |
D |
E |
2 |
A |
B |
C |
C |
E |
3 |
A |
A |
C |
C |
E |
4 |
A |
C |
C |
E |
E |
5 |
C |
C |
E |
E |
E |
6 |
C |
C |
E |
E |
E |
(2005/12/09 下線部を追記)
神武天皇がAかBかCかDかEかわからない状態(神武天皇の男系子孫が最終的に断絶したかそうでないかわからないという前提で)で、6世代後にその男系系列が残る確率を求める場合が「下り」です。これは見ればわかるとおり、この人口増
加を考えないモデルでは五分の二(五家系のうち二家系が残ったので)で、「確率が低い」と考えてもしようがない。
しかし神武男系がCかEであること(最終的に生き残ったほうの家系のうちのひとつであること)は、皇族が男系子孫であるという仮定から(天皇家は現存しているから)わかっているわけです。(このとき、この「生き残った家系である」ということを知識に含めて残った数や人口の中での割合を考えることが、)それが「上り」の意味です。上の表を見れば、残った系列
はそれだけで、特別な理由がない限り、人口の中で、相対的に増加する、ということがわかります。そして、人口増加を顧慮すれば、この増加というのが相当数
にのぼることも。
で、神武天皇の男系子孫が残っていて、かつほかにはほとんど子孫がいない、という仮定は以下の表なような想定です。
今度は人口増加を考慮します。倍々ゲームで人口が増えたとします。
0 |
神武 |
B男系始
祖 |
C始祖 |
D始祖 |
E始祖 |
1 |
A 1 |
B
10 |
C 10 |
D 10 |
E 10 |
2 |
A 1 |
B 20 |
C 20 |
D 20 |
E 20 |
3 |
A 1 |
B 40 |
C 40 |
D 40 |
E 40 |
4 |
A 1 |
C 160 |
C |
D 80 |
E 80 |
5 |
A 1 |
C 320 |
C |
D 320 |
D |
6 |
A 1 |
C 960 |
C |
C |
D 320 |
数字はその世代のその男系の残った数です。
つまり、神武男系が皇室だけである、あるいは非常に少ないという仮定は、なぜか上の表のように神武男系だけが、拡散しなかった(言い換えれば、増加しなかったのに生き残り続け、生き残ったにもかかわらず増加しなかった)、という特別の理由を考えな
ければいけない。なにかよほど特段の事情がない限り、残った系列は、増えているといえる、というのは上の表から明らかです。
表を見てよく考えてみてください。男系が断絶しやすい、
残るのが困難だということと、残った男系がたくさんの子孫を持っているということは、矛盾するのではなく、相補的な、ひとつの事実の両面なのです。(家系がひとつ断絶するごとにその家系が人口の中で占めていた割合は別の家系によって占められるからです)で
すから、男系の断絶しやすさをいくら説いても、それは、残った男系が少ししか子孫がない、という主張の補強には、まったくならないのです。そして我々は万
世一系の仮定により神武男系が、結果として存続した男系であることを知っている。で、ある以上、神武男系現存少数の仮説は、神武男系について、他のすべて
の存続した男系一般に言える、ここまで述べてきた増加傾向の必然に逆らう特段の事情を立証しなければいけません。
しかし、あきらかに、神武男系には事実として、そういう特段の事情はありません。藤原系列と並んで、むしろ財力・権力が相対的にあった、増殖に有利で意欲
的だった系列です。
さて、問題は神武男系総体数なわけです。皇室という直系一族は、問題ではない。皇室という直系は、神武男系が、生き残った男系のひとつであるという証拠に
なる、たま
たまわれわれが知っているその男系に属する一例に過ぎないわけです。なぜなら、何度も書いているように、直系・傍系の区別は、Y染色体とは関係のない、文
化的・社会的な区
別である、「家督」「皇位」の問題だからです。関係がないというか、神武男系内部の区別であって、神武男系の総数を考える上では、まったく意味がない区別
です。
1 |
神武 |
B |
C |
D |
E |
2 |
A 皇族
1 その他 9 |
B |
C |
C |
E |
3 |
A 皇族
1 その他 10 |
A |
C |
C |
E |
4 |
A 皇族
1 その他 20 |
A |
C |
E |
E |
5 |
A 皇族
1 その他 20 |
A |
E |
E |
E |
6 |
A 皇族
1 その他 30 |
A |
E |
E |
E |
とまあ、こういうことは考えられます。
(この部分、この議論で皇族という「直系」を問題にすることが解
明に役立つという意味ではなく正反対で、多くの間違いは、皇族という直系の「遺伝子」があり、その遺伝子が、各世代ごとに「外部」に放出されるという間
違った描像に由来している。神武の男系子孫のなかから皇族という範囲を限定しているのは「Y染色体」ではなく、文化的要因と現在の天皇との親等である。皇
室からY染色体が「放出」されるというイメージが間違いなのは、皇室以外のすべての神武の男系子孫の家系もまた「放出」し、かつ、その枝分かれもまた同様に放出し、というふうであるからである。つまり、神武の男系子孫であるという条件で言えば、「本家分家の差異は存在しない」のである。「放出」モデルで考えている人は、無意識に、本家と分家の区別を導入してしまっているのである)
神武男系内部だけで考えると、直系皇族はそんなに増えません。なぜなら、皇位についたひとが一定の親等内にいること、という限定条件がはいるからです。ま
た長幼の順序、庶子嫡子の区別も関与します。
BやCのように、或る男系が断絶する、ということと、或る男系の中で、特定の「直系」が断絶する、ということでは、話がぜんぜん違います。そして、BやC
は断絶したことがわかっている。また、それは非常に断絶しやすいのかもしれない。しかし、それは「下り」で考えるからで、問題にしている男系が、残った男
系なのか、断絶した男系なのか、我々が知らない、という条件下でのことです。
我々は、皇族の存在から、(仮定により)神武男系が、断絶しなかった男系であることを知っている。そこから、神武男系がどれくらい残っているか、という推
論をする場合、
「特定の直系は断絶しやすいししばしば断絶した」ということと、「その特定の直系が属する男系総体としては増えた、いっぱいいる」ということは、完全に両
立します。
皇室が直系、あるいは皇族、あるいは皇位継承権者の総数を保つに苦労してきた、側室制度とか必要だった、「血統」の存続は大変だった、ということはいえま
す。しかし、神武男系総数を保つに苦労した、断絶しそうだった、ということは全然いえません。両者は別のことです。